FC2ブログ

ふるさと考

 司馬遼太郎の小説の中に、生まれてこの方一度も自分の村から外に出たことのない中年女性の話が出ていて、へーっと驚いたことがある。しかもその話は、司馬氏が直接その女性から聞き取ったもので(その小説の成り立ちから考えると、おそらく昭和30~40年代のことだと思う)、なにも何百年も前の封建時代の事柄ではない。そうした、どこかしら時間から置き忘れられてきたような女性の話が何となく似つかわしく思えるような、本州の西の果ての町・山口が僕の故郷である。ここで僕は高校卒業までの18年間を過ごした。

 その後、父親の転勤と僕の大学進学が重なり、広島、東京と移り住んでいくことになるけれど、僕の心の中の原風景は、山口のたおやかな野山とつねに二重写しになっている。

 そのことを最近あらためて感じるようになった。ちょうど今年の夏休みのことだ。久しぶりにひとりで故郷に帰ったとき、僕はサンダルをつっかけて、近くの川辺を散歩した。夕暮れ近い時分だった。僕は、デジカメの液晶(ファインダーといえればもっと格好いいんだけど…)に映る風景をパシャパシャと気の向くままに切り取って歩いた。

 あとになって、撮りためた写真を編集していると、それらの故郷の写真にだけは、他の写真にはない深い深い何かが刻み込まれているのが、僕にははっきりと感じとれたのである。僕の体の細胞は、実は故郷の空や風や水で満たされていたのだ――とまあ、大げさに言えばそんな感じ。もちろん、それは、たんに僕の一時的な郷愁にすぎなかったのかもしれないけれど…。

 そういう心の原風景というのは、きっと誰もが持っているのだと思う。

 きっとあなたにもありますよね、そんな、あなただけの心のふるさと。


ふるさとは遠きにありて思ふもの そして悲しくうたふもの

よしやうらぶれて 異土の乞食(かたひ)となるとても

帰るところにあるまじや

(室生犀星「小景異情」より)

 


IMG_3433 (2) IMG_3437 (2) IMG_3442 (2) IMG_3443 (2)

Comment

Re: ふるさと考

同感、同感ですね。ふるさとはほんに掛け替えのないところですから。それに、先生の写真を撮る腕がどんどん上がられましたね。

麦畑の守り者さん

ありがとうございます^^
かけがえのないものを、大切にしたいですよね。

Re: ふるさと考

心の原風景といえば、やはり「麺類」です。
私は武漢の出身ですから、武漢がふるさとです。ふるそとの風景、身近にあるのです。

祖父は河南省の出身ですから、いつも麺類の料理を作ってくれました。「面糊」「窝窝头」「卷饼」など~~私のこころはだんだん麺類に慣れていました。(武漢では麺類を主食として食べる人は少ないと思います。)

でも学校の食堂は麺類の料理が少ないです、そしておいしくはありませんし。見ると食べる気がなくなります。

異土の乞食(かたひ)となるとても
とはいえる、な~~

月野小斑猫さん

僕の体細胞の残り半分は麺でできています、っていうのはウソだけど(当り前か)、僕も麺には目がありません。今度、おいしい麺屋さんを一緒に探しませんか?

Re: ふるさと考

先生のこの文を読んで、なんとなくふるさとのことが浮かんできて、郷愁の感じが強くなったんです。多分ふるさとを出てから初めて郷里のことを惜しむだろうと思います。国にいるとき、周りのすべてが普通ですが、ここでは、やっぱりふるさとのことがいいなと思うことがしばしばあります。

蟲くん

故郷というのはそういうものですね。
当たり前に見えたモノが、実は自分にとってかけがえのないものであるという…。
故郷、大切にしたいですね。

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

Re: ふるさと考

いろいろな原因で故郷を離れました。もう十数年も立ったのに、時々 故郷の夢を見ます。やっぱり故郷は忘れられないですね。どのぐらい時間立っても。

ひまわりさん

はい、本当に僕もそう思います。故郷こそが心の原風景ですよね。

Re: ふるさと考

23日 で 17日 の コ メ ン ト を 書 く の は 大 丈 夫 で す か 。 v-396『 ふ る さ た 』 と こ の 四 枚 の 写 真 を 見 た と た ん に 、 心 が や さ し く な っ て き ま し た 。
小 さ い 時 、 家 は 天 よ り も お お き い で し た 。 ま す ま す 成 長 す る と 、 か ば ん を 片 付 け て 、 家 に で て 、 遠 方 に 旅 に い き た く な る か も し れ ま せ ん 。 古 里 は 永 遠 な 心 の 港 で す が 、 も し 一 生 に も 外 の 世 界 に 出 な い と 、 古 里 の 美 は そ ん な に 深 く感 じ ら れ ま せ ん で し ょ う 。

えくぼさん

はい、まさにふるさとは「遠きにありて思うもの」ですね。写真も気に入っていただけたようで、とてもうれしいです。
 
管理人にのみ表示する
 

Track Back

TB URL

HOME

「日本国憲法」

日本国憲法

カレンダー

09 | 2019/10 | 11
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -

新着情報

「お風呂を買ってルンルンしよう」(12/18)中国語訳が追加されました。2008-12-20 NEW

「夢が試される場所」(12/11)中国語訳が追加されました。2008-12-20 NEW

「16Daysのカウントダウン」(12/16)中国語訳が追加されました。2008-12-18 NEW

「お風呂を買ってルンルンしよう」(12/18)語注が追加されました。2008-12-18 NEW

「焼きうどん のち メランコリック」(12/17)中国語訳が追加されました。2008-12-17 NEW

「原点へ、原点から。」(12/15)語注が追加されました。2008-12-16 NEW

「夢が試される場所」(12/11)語注が追加されました。2008-12-11 

「夢の背中」(12/10)中国語訳が追加されました。2008-12-11 

プロフィール

一石亭華中

Author:一石亭華中
ようこそ、本ブログページへ。
一石亭は中国在住8年目を
迎えました。
でも中国語はまだ初歩の初歩。
趣味は「お仕事」と散歩、それに写真撮影。
あ、それからお昼寝も…趣味のうち、かも…。

YouTube今週のウタちか

凹んだとき、元気がでないとき、僕を支えてくれ、力づけてくれるウタを週替わりで紹介します。ちょっと古い歌が多いかも…ですが。今週も「ちょっと切ない歌」を。

最新記事

最新コメント

カテゴリ

月別アーカイブ

日本文学100選

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

検索フォーム

リンク